
変貌国贸易构造影响.pdf
6页変貌するわが国貿易構造とその影響について-情報技術関連(IT)財貿易を中心に-【要 旨】1.90年代において、わが国の内需は低成長を続ける一方、海外との貿易は増加し、輸出入がGDPに及ぼす影響は大きくなっているまた90年代後半以降、コンピュータなど情報技術関連(IT)財の需要が世界的に増大したことは、わが国の貿易構造を大きく変化させたこのような変化は、2000年度中葉からの米国経済の減速が、特にIT財を中心にしてアジア諸国やわが国の景気動向に大きな影響を与えていることの背景にもなっている本稿は、①90年代以降のわが国の貿易動向を概観し、②比較優位の変化や純輸出の背景などについてIT財貿易を中心に分析するとともに、③貿易のもう一つの側面である産業内貿易の動向とその影響について考察し、わが国貿易構造の特徴を明らかにするものである2.わが国輸出入の相手国シェアは、米国が頭打ちとなる一方、アジアが高水準になっている輸出結合度(国別輸出額を相手国の輸入規模で除して相対化したもの)をみると、台湾や韓国のほか、最近では中国との関係が米国を上回って深まっている急増しているアジアとの貿易品目を需要段階別に再分類すると、輸出入とも機械部品などの中間財が増加しており、全体に占める比率は一貫して上昇している。
顕示対称比較優位指数を用いて品目別の輸出競争力の変化をみると、機械・輸送機器は高い比較優位を誇っているものの、その優位性は次第に弱まっている代わって台湾の優位性が高まっているほか、中国の比較劣位が急速に改善されている3.わが国の純輸出(輸出-輸入)でみた比較優位と国内の要素賦存との関係について、財別のデータを用いて検証した結果、IT財では、中国・韓国・台湾へ資本集約的なものを輸出し、研究開発集約的なものを輸入する傾向がみられる後者の要因のひとつとして、IT財は国内で研究開発を行い、海外直接投資等を通じて中国・韓国・台湾から輸入していることが考えられるしかしIT財における純輸出と要素賦存との関係は、必ずしも強くはない両者の関係が前提としない規模の経済性や製品差別化などにより、純輸出には表れない同一産業(財分類)内での双方向貿易(いわゆる産業内貿易)の活発化が影響していると考えられる― 2 ―4.IT財の比較優位性は、中間財では高いが最終財では低下している一方、中国の最終財や一般機械部品の競争力は着実に向上している日本、中国・韓国・台湾、米国間のIT財貿易のうち最大の需要先は米国であり、最終財のウェイトが比較的高い。
一方アジア域内では中間財のウェイトが非常に高くなっており、域内で重層的な中間財貿易が行われていることがわかるこのため、米国のIT需要の動向がアジア地域の貿易、ひいては生産動向に多大なインパクトを与える構造になっている5.わが国の産業内貿易において、特にIT財の動きに着目すると、中間財は活発になっているが、最終財は低位にとどまっている産業内貿易を促す規模の経済性や製品差別化が、IT財においては最終財よりも中間財の特徴として強く表れている可能性がある産業内貿易は、製品差別化や規模の経済性がみられる場合、自国の企業はある財の生産に特化し、別の財は外国企業が作ったものを輸入した方が便益が高いために発生するこの関係を財別のパネルデータを用いて確認してみた業種別にみると、コンピュータや民生用電気機器は、国内の設備規模にそれほど変化がなくても産業内貿易が伸びているこれには、海外直接投資の拡大による逆輸入の増加などが影響していると考えられるまた、特に集積回路では差別化と産業内貿易指数がともに高い伸びを示しており、製品がグローバルに差別化され、双方向貿易が活発になっているという側面がうかがわれる6.最後に、産業内貿易が国内経済に与える影響として生産性との関係を検証した。
産業内貿易が進展すると、輸入品との競争促進などを通じて生産性が向上することが考えられる産業レベルのデータを用いてこの関係を検証したところ、ある程度の有意性が認められ、産業内貿易の高まりが資本生産性を高めていることがわかった7.以上、わが国の貿易構造は対アジア貿易の進展と世界的なIT財需要の拡大により大きく変化しているIT財を中心に中間財貿易の比率が高まっているなかで、中期的には産業内貿易の増加が国内の生産性向上を促している面がみられるしかし、アジア域内での重層的な中間財貿易に伴って、IT財の最大の需要国である米国の景気動向がアジア経済に与えるインパクトは多大となっており、わが国に及ぶ影響も大きくなっている点にも留意しなければならない今後のわが国の経済運営においては、こうしたグローバル化の実態を十分に踏まえた上で、国内の製品開発力の一層の強化を促進していく必要がある[担当:品田し な だ 直樹な お き ]― 3 ―・わが国の輸出入品目を需要段階別に再分類すると、対アジア輸出では機械部品など中間財の比率が高くなっている一方アジアからの輸入では、非耐久消費財など最終財の比率が高いが、中間財にも上昇傾向がみられる。
・輸出競争力の変化を顕示対称比較優位指数( 図表1 - 3 備考参照) を用いて概観すると、機械・輸送機器が高い比較優位を誇っているが、その優位性は次第に弱まっている代わって台湾の優位性が高まっている他、中国の比較劣位が急速に改善されている 億米ドル) (%) ( 億米ドル) (%)( 年) ( 年)( 備考)O E C D 「 I T C S 」 により作成 備考)O E C D 「 I T C S 」 により作成食料品及び 動物飲料及びた ばこ原材料( 燃 料を除く)鉱物性燃料 動植物性油 脂化学工業品 素材製品機械・輸 送機器日本9 0 年- 0 . 8 7 6- 0 . 8 9 6- 0 . 7 7 3- 0 . 9 1 7- 0 . 8 0 6- 0 . 2 1 2- 0 . 1 3 40 . 3 4 2 9 5 年- 0 . 9 0 3- 0 . 7 9 3- 0 . 7 4 9- 0 . 8 4 2- 0 . 9 3 4- 0 . 1 8 1- 0 . 1 8 50 . 3 0 9 9 8 年- 0 . 8 7 5- 0 . 8 3 0- 0 . 6 7 7- 0 . 8 8 3- 0 . 9 1 2- 0 . 1 6 3- 0 . 1 6 40 . 2 5 8 中国9 2 年0 . 1 1 5- 0 . 1 4 7- 0 . 1 0 8- 0 . 2 3 3- 0 . 3 0 0- 0 . 2 6 80 . 1 0 7- 0 . 3 9 2 9 5 年- 0 . 0 3 2- 0 . 0 2 7- 0 . 2 4 8- 0 . 3 3 6- 0 . 1 3 5- 0 . 2 2 90 . 1 5 2- 0 . 2 7 6 9 8 年- 0 . 0 4 4- 0 . 3 0 3- 0 . 3 3 9- 0 . 3 7 1- 0 . 3 7 6- 0 . 2 6 50 . 0 8 5- 0 . 1 9 8 韓国9 0 年-------- 9 5 年- 0 . 5 4 8- 0 . 7 8 7- 0 . 5 5 2- 0 . 5 7 4- 0 . 9 2 2- 0 . 1 6 30 . 1 4 90 . 1 6 2 9 8 年- 0 . 5 5 0- 0 . 7 8 3- 0 . 5 3 6- 0 . 2 7 6- 0 . 8 8 6- 0 . 1 1 10 . 1 8 30 . 0 9 4 台湾9 0 年- 0 . 3 1 5- 0 . 9 3 6- 0 . 5 2 1- 0 . 8 9 4- 0 . 8 3 1- 0 . 3 4 40 . 1 8 70 . 0 6 0 9 5 年- 0 . 3 6 6- 0 . 8 8 0- 0 . 4 7 6- 0 . 8 1 5- 0 . 8 7 4- 0 . 1 8 80 . 1 8 80 . 1 3 3 9 8 年- 0 . 6 3 8- 0 . 9 3 5- 0 . 4 9 2- 0 . 7 7 0- 0 . 8 8 8- 0 . 2 6 90 . 2 1 10 . 1 4 5 米国9 0 年0 . 0 1 20 . 2 9 10 . 1 4 9- 0 . 5 3 80 . 0 3 80 . 1 0 4- 0 . 2 9 50 . 1 4 1 9 5 年0 . 0 2 70 . 2 0 20 . 1 2 9- 0 . 5 7 60 . 0 5 00 . 0 6 4- 0 . 2 7 20 . 1 1 7 9 8 年- 0 . 0 5 60 . 0 7 40 . 0 0 0- 0 . 6 0 10 . 0 3 80 . 0 2 3- 0 . 2 4 20 . 1 2 7( 備考)1 . O E C D 「 I T C S 」 により作成。
2 . 顕示対称比較優位( R e v e a l e d S y m m e t r i c C o m p a r a t i v e A d v a n t a g e ) 指数は( R C A 指数- 1 ) / ( R C A 指数+ 1 ) R C A 指数は、( 輸出国j の総輸出に占めるi 財の割合) ÷( 世界総輸入に占めるi 財の割合) 3 . R S C A 指数は輸出財の比較優劣を表すプラスならば比較優位、マイナスならば比較劣位である図表1 - 3 日本、中韓台、米国の顕示対称比較優位( R S C A ) 指数対アジア輸出は中間財中心、機械類全体の比較優位は低下図表1 - 1 需要段階別にみた中韓台への輸出品目図表1 - 2 需要段階別にみた中韓台からの輸入品目01 0 02 0 03 0 04 0 05 0 06 0 07 0 08 0 09 0 01 0 0 09 0 9 1 9 2 9 3 9 4 9 5 9 6 9 7 9 8 9 92 03 04 05 06 07 0中間財最終財天然資源その他中間財比率( 右目盛)最終財比率( 右目盛)01 0 02 0 03 0 04 0 05 0 06 0 07 0 08 0 09 0 01 0 0 09 0 9 1 9 2 9 3 9 4 9 5 9 6 9 7 9 8 9 92 03 04 05 06 07 0中間財最終財 天然資源その他 中間財比率( 右目盛)最終財比率( 右目盛)・わが国純輸出(輸出-輸入)の比較優位が国内の要素賦存とどのように関係している か、財別のデータを用いて検証した。
加工組立型では研究開発が集約的であること、素材型では技術者の労働投入が集約的であることが、輸出を増加させる要因となっている一方、非技術者が多く投入されるような労働集約的な製品は輸入する傾向にあるまた、中国・韓国・台湾(以下、中韓台)に対しては、加工組立型では資本集約的な製品を輸出している ・コンピュータ等情報技術関連(IT)の財については、中韓台に対して資本集約的なものを輸出し、研究開発集約的なものを輸入する傾向が概ねみられる後者の要因のひとつとして、IT財は国内で研究開発を行い、海外直接投資等を通じて中韓台から輸入していることが考えられる ・しかしIT財についての純輸出と要素賦存の関係は、 必ずしも強いものとはいえない。 両者の関係が前提としない規模の経済性や製品差別化などにより、純輸出には表れない同一産業(財分類)内での双方向貿易(いわゆる産業内貿易)が活発化していることが影響していると考えられる被説明変数説明変数 純輸出資本研究開発 技術者その他の 就業者 対世界全産業-+( * * )+( * * )- 製造業(素材型)+-+( * * )-( * * ) 製造業(加工組立型)-+( * * )+-( * ) I T 財++- 対中国・韓国 全産業+( * * )-+( * 。
