日本文学史第二版古代後期の文学.pdf

1 第二章古代後期の文学（平安時代）第一節古代後期の文学概観一、文学背景（一）古代後期古代後期を中古とも言う あるいは平安時代とも呼ばれる即ち桓武天皇の平安京遷都（794年）から鎌倉幕府の成立（1192 年）までの約 400 年間を指す 二）政治律令政治は 9 世紀にはいってから、急速に崩壊した9 世紀中ごろに藤原良房が摂政となり、実権を握るようになった11 世紀初め、摂関政治は藤原道長が権威を独占する当時に、全盛期を迎えた11 世紀後半になって、白川天皇が院政を始めて、衰退していった二、唐風文化から国風文化へ9 世紀末、唐の国が衰退するに伴って、仮名文字が発明され、和歌が次第に盛んになった10 世紀初め頃に、日本最初の勅撰和歌集『古今和歌集』が編纂され、隆盛期に入った2 三、女流文学の開花10 世紀から 11 世紀にかけて、女流文学が開花した藤原道綱母が『蜻蛉日記』を書き、また、清少納言の随筆『枕草子』と、紫式部の物語『源氏物語』は、「古典文学双璧」と称されていた四、平安末期の文学日本の最大の説話集『今昔物語集』が編集され、新しい時代の息を感じさせられた第二節主な文学作品一、『古今和歌集』『古今和歌集』は醍醐天皇の勅命によって、紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑が 905 年に編集した日本における最初の勅撰和歌集であり、平安時代の代表的な歌集である。

全集20 巻、およそ千百首の作が収められている『古今集』には、漢文で書かれた真名序と仮名で書かれた仮名序が備わっている普通三期に分けられている第一期読み人知らずの時代 歌風は素朴で、 恋歌が圧倒的に多い第二期六歌仙の活躍した時代即ち、在原業平、僧正遍昭、小野小町、文屋康秀、大伴黒主、喜撰法師3 第三期選者の時代『古今集』は感情が繊細に、優麗典雅な日本的な美を体表する日本人の美意識の原典として文学の規範となった二、『竹取物語』9 世紀末——10 世紀初め頃に成立した、作者も未詳です現存する日本最古の物語であり、 「物語の祖」といわれている伝奇物語です主人公は竹取の翁、かぐや姫がいた三、『伊勢物語』日本最初の歌物語で、作者は未詳、10 世紀初めごろに成立した主人公「昔男」の恋愛、流離、友情、別離などをめぐって、生涯にわたる様々な内容である四、『堤中納言物語』12 世紀の平安後期の作品日本文学史における最初の短編小説集である、作者は未詳 作品は恋愛を主題とするものが半数ぐらいある五、『源氏物語』（一）作品紹介1008年に、 紫式部という女流作家によって書かれたのである4 主人公は光源氏、紫の上などがいた。

『源氏物語』は日本古典文学の最高峰であるだけでなく、 今でも世界文学史で第一流の作品に見なされているその内容は三つの部分に分けられている第一部「桐壺」から「藤裏葉』までの33 帖第二部「若菜（上）」から「幻」までの8 帖第三部「匂宮」から「夢浮橋」までの13 帖（二）作者 -- 紫式部紫式部は漢学の素養の高い官吏の家に生まれたのである祖父藤原兼輔は名高い歌人であり、 父藤原為時は和歌漢詩文に通じており、父祖一門に文人が多い三）『源氏物語』から現れた文学思潮奇を追求せず、世の中や人間の心に潜んでいる真実を写実的な手法で描き出しつつ、自然、人事に対する観照が非常に細かく、「もののあはれ」で全編の雰囲気を統一させる江戸時代の本居宣長は『源氏物語』の本質は「もののあはれ」にあると主張する六、『栄華物語』日本最初の歴史物語です全40 巻、作者未詳編年体で藤原道長の栄華を中心に描き、ひたすら道長を賛美している5 七、『大鏡』11 世紀末頃成立した『大鏡』は最初の鏡物である作者は定説がない紀伝体で書かれたものである、歴史の真実が見られる『大鏡』、『今鏡』、『水鏡』、『増鏡』を合わせて、「四鏡」というのである。

八、『今昔物語集』日本最大の説話集として、12 世紀ごろに編集されたのである内容：仏教説話と世俗説話三国：天竺、振旦、本朝文体：和漢混交文表記：宣命書九、紀貫之と『土佐日記』紀貫之の晩年（ 935年頃）の作であるこれは作者が女性の名に仮託して、仮名文字で書いた日本の最初の日記である十、『蜻蛉日記』974 年に、 作者は藤原道綱母である 日本最初の女流日記である上、 中、 下の三巻からなっている 日記の内容には作者が結婚後、幸福ではなく、苦悶に満ちた気持ちが書かれていた6 十一、『和泉式部日記』成立 1007年、 作品は主に作者が帥宮敦道親王との恋をめぐって、書き綴った物語風の日記である十二、『紫式部日記』1010年に、紫式部が書いたものである女房仲間に対する、特に、清少納言へ批判はよほど猛烈である十三、『更級日記』1060 年、菅原孝標娘の手によって書かれた自伝的日記である作品には、作者の浪漫的で、繊細な感情が表れている十四、清少納言と『枕草子』1001 年に、書き上げられたといわれている内容は作者の宮廷生活と自然や人事に関する出来事を記録した内容から次の三種類に分けられている1）類聚の章段（2）日記の章段（3）随想の章段十五、『日本霊異記』822 年に、景戒の手によって編集されたということである。

三巻7 より成っている日本最初の仏教説話集であり、因果応報の仏教思想が主調とされている十六、『千載和歌集』作者: 藤原俊成1188 年に奏覧「幽玄」という世界を作り上げようとしていた奥深く繊細で表現の外ににじみ出る余情である十七、『梁塵秘抄』作者: 後白河法皇12 世紀後半二編纂された当時流行していた今様や催馬楽などの歌謡を集めたのである。