
第97号-北海道土地改良设计技术协会.pdf
62页972017.3 第97号第97号●巻頭言農業農村工学の担い手の確保北海道開発局農業水産部 農業設計課長 細井 俊宏北海道開発局農業水産部 農業計画課 事業計画推進官 松野 康夫2月形土地改良区 理事長 山際 榮二37●地方だより●特別寄稿台湾 −日本統治初期の農業・農業水利事業にみる− 10交流広場「技術士試験対策について」「何気なく水を飲める幸せ」平成28年度 道外現地研修会 報告平成28年度 現地研修会(後期)報告資格試験年間スケジュール技術情報資料農業農村工学会 技術者継続教育(CPD)制度の概要協会事業メモ橋本 正樹村山 徹男渡邊兼太郎齋藤 裕輝4144485154565859●この人に聞く土地改良区訪問 〔月形土地改良区〕稚内市長 工藤 広31わがまちづくりと農業 〔稚内市〕農村空間研究所長 梅田 安治●寄 稿北海道の農業技術のラオスへの移転事業計画3DレーダによるL型ブロック水路下の空洞調査について1424北倉 公彦木村 毅/山口 義博●新しい動き「新たな土地改良長期計画」 について 4巻 頭 言技術協●●第97号2「農業農村工学の担い手の確保」北海道開発局 農業水産部 農業設計課長 細井 俊宏どこの組織でも、 いつの時代でも人材の確保と育成は大変重要である。
国家公務員の定員管理は引き続き厳しいものがあり、 北海道開発局の農業部門の定員は平成29年度には遂に650名を切る情勢である かつては、 退職者に見合う数の採用が許され、 現状維持の人員を確保できた時代もあったが、 現在では、 退職者数を大きく下回る数の採用しか許されていない状況である と、言いつつも、 その少ない採用枠を埋めるのに大変苦労し ているのが現実である 平成29年度の新規採用の状況について振り返ってみる北海道開発局の農業部門で採用し ているのは、 一般職 (大卒程度)(以前のⅡ種に相当) と一般職 (高卒程度)(以前のⅢ種に相当) であるが、 ここでは紙幅の関係上、 全国的に厳しかった一般職 (大卒程度 (農業農村工学) ) に絞って見てみたい今年度は民間の選考開始時期が6月に早まったこ ともあり、 公務員、 民間を問わずに早めの就職内定を目指す学生が早々に民間への就職 (内定) を決めたと見られ、 全体に公務員志望者が少なかった 実際、 大学の就職担当者への聞取によると、 4月や5月には内々定をもらっていたという声が少なからず聞かれた北海道労道局の資料によると、 北海道における 「建築 ・ 土木 ・ 測量技術者」 の有効求人倍率は、昨年4月では3.15であったが、 公務員の採用選考が始まった8月には5.18に跳ね上がる。
これは、 求職者数が842人から536人に減ったこ と、 すなわちその間に就職した者がかなりの数がいたことがわかる 民間の技術者ニーズが高く、 上記の統計の外ではあるものの、 新規学卒者が民間へ流れた可能性が高いこ とがデータからも窺える一方、 公務員志望の学生は、 国、 都道府県、 市町を併願する者が多い 団塊世代が抜けた市町では、 技術系職員の積極的な補充を行っており、 全国的に市町の採用枠は多い それに加え、 転勤のない職場を希望する学生が多く、 親もそれを望んでいる 仕事の内容やスケールではなく、 転勤の有無が就職先を決める上での優先事項となっているのである 当然、 第一志望は近隣の市町、 それがだめ技術協●●第97号3どこの組織でも、 いつの時代でも人材の確保と育成は大変重要である 国家公務員の定員管理は引き続き厳しいものがあり、 北海道開発局の農業部門の定員は平成29年度には遂に650名を切る情勢である かつては、 退職者に見合う数の採用が許され、 現状維持の人員を確保できた時代もあったが、 現在では、 退職者数を大きく下回る数の採用しか許されていない状況である と、言いつつも、 その少ない採用枠を埋めるのに大変苦労し ているのが現実である。
平成29年度の新規採用の状況について振り返ってみる北海道開発局の農業部門で採用し ているのは、 一般職 (大卒程度)(以前のⅡ種に相当) と一般職 (高卒程度)(以前のⅢ種に相当) であるが、 ここでは紙幅の関係上、 全国的に厳しかった一般職 (大卒程度 (農業農村工学) ) に絞って見てみたい今年度は民間の選考開始時期が6月に早まったこ ともあり、 公務員、 民間を問わずに早めの就職内定を目指す学生が早々に民間への就職 (内定) を決めたと見られ、 全体に公務員志望者が少なかった 実際、 大学の就職担当者への聞取によると、 4月や5月には内々定をもらっていたという声が少なからず聞かれた北海道労道局の資料によると、 北海道における 「建築 ・ 土木 ・ 測量技術者」 の有効求人倍率は、昨年4月では3.15であったが、 公務員の採用選考が始まった8月には5.18に跳ね上がる これは、 求職者数が842人から536人に減ったこ と、 すなわちその間に就職した者がかなりの数がいたことがわかる 民間の技術者ニーズが高く、 上記の統計の外ではあるものの、 新規学卒者が民間へ流れた可能性が高いこ とがデータからも窺える。
一方、 公務員志望の学生は、 国、 都道府県、 市町を併願する者が多い 団塊世代が抜けた市町では、 技術系職員の積極的な補充を行っており、 全国的に市町の採用枠は多い それに加え、 転勤のない職場を希望する学生が多く、 親もそれを望んでいる 仕事の内容やスケールではなく、 転勤の有無が就職先を決める上での優先事項となっているのである 当然、 第一志望は近隣の市町、 それがだめなら出身都道府県庁、 それでもだめなら近隣の農政局や地方整備局という順になるのである北海道開発局と し ては、 道内出身者で採用枠を埋められれば理想であるが、 現実はそんなに甘く ない 道内からの合格者がいないのである こ うなる と道外出身者を採用しなければならない 関東農政局と中国四国農政局で行われる各農政局の面接に入れてもらって採用活動をするのだが、 各農政局も数少ない国家公務員希望者の採用に必死である 当然、 各農政局優先の中での選考となるので、 北海道開発局としては不利な立場である おまけに道外出身者にしてみれば北海道は遥かに遠い地なのである 先にも触れたが、 地元志向が強い学生が多い中で、 これからの人生のほとんどを北海道で過ごそう という者はそうそういない。
面接当日に少しでも脈がありそうな受験者に声をかけ、 説明し、 説得し、 何とか確保を図るのであるさらには、 女性比率3割というかなり厳しい条件も付されている 国家公務員の採用者に占める女性の割合を3割以上とする目標である 北海道開発局では事務官も含めた総数で3割を満たせばよいこ と となっているため、 事務官で女性比率を稼ぐこ とができるものの、 一定数の女性技官の採用は必須である 各農政局は農業農村工学全体で3割確保なので、 なお一層女性の確保には躍起であるかく して、 やっとの思いで農業農村工学3名 (うち女性1名) の新規採用者を確保することができた この外、 本省採用の総合職や高卒一般職、 農学等も含めて、 平成29年度当初には17名の新人を迎える予定である人材の確保は、 官民問わず非常に厳し く なっているこ とを痛感している これからも少子化が進むこ とを考えると、 より多く の若者に農業農村工学の魅力とやりがいを伝え、 興味を持ってもらえるような中長期的な取組が必要だろう 農業土木技術者であったおじい様の勧めで農業農村工学の道に進んだという学生もいた 身近なところから始めることも必要ではないか。
将来を担う技術者の確保は、 官民の垣根を越えて取り組むべき課題だという認識が必要だ技術協●●第97号4新しい動き新 し い 動 き「新たな土地改良長期計画」 について北海道開発局農業水産部 農業計画課 事業計画推進官 松野 康夫1 はじめに平成28年8月24日に 「新たな土地改良長期計画」 が閣議決定されました 土地改良長期計画は、 土地改良法の規定に基づき、 土地改良事業の計画的な実施に資するため、 事業実施の目標及び事業量について、 5年を一期と して定めるものです 今回の計画は、 平成28年度から32年度までを計画期間と し ています本稿では新たな土地改良長期計画 (以下 「長期計画」 という ) のあらましについて述べたいと思いますはじめに、 長期計画の策定に至る検討経緯です 平成24年3月に前計画を策定し て以降、 農地の大区画化等による農業の体質強化や、 農業水利施設の戦略的な保全管理等を通じた食料供給力の確保は着実に進みつつありますが、 以下のように農業 ・ 農村を取り巻く情勢が大きく変化したため、 計画期間を1年前倒しし て長期計画を策定しました変化の1点目は超高齢社会、 本格的な人口減少社会の到来やグローバル化の進展等に対応するべく定められた食料・農業・農村基本計画 (平成27年3月31日閣議決定) に基づき、 農業の構造改革や新たな需要の取込み等を通じて農業や食品産業の成長産業化を促進するための産業政策と、 構造改革を後押ししつつ農業 ・ 農村の有する多面的機能の維持 ・ 発揮を促進するための地域政策を車の両輪と し て進める必要があるこ とです。
2点目は、 環太平洋パートナーシップ (TPP) 交渉の大筋合意を受けて策定された 「総合的なTPP関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定) に沿い、 成長産業と し ての力強い農業を作り上げる必要があることです 長期計画においても、 農業を取り巻く国際環境の変化に対応した土地改良事業の戦略的な推進を図るため、 力強い農業を作る観点からの政策目標や成果指標等について明確にする必要があります3点目は、「復興 ・ 創生期間」 における東日本大震災からの復興の基本方針 (平成28年3月11日閣議決定)(以下「復興 ・ 創生期間における基本方針」 という ) に即し、 被災地の農業の再生に向けて、 引き続き、 農地の復旧等を推進すると ともに、 被災地の自立につながり、 地方創生のモデルとなるような復興を実現する必要があるこ とです 今後、人口減少、 少子高齢化が進む中、 自然災害を契機に集落機能が脆弱化しないよう、 被災地の復興はもとより、「強さ」 と 「しなやかさ」 を持った安全 ・ 安心な地域経済社会の構築を促す必要がありますこれらに加え、 経済財政運営と改革の基本方針2015(平成27年6月30日閣議決定) で定められた 「経済 ・ 財政再生計画」(平成28~32年度) では、 社会資本整備について、 経済再生と財政健全化の双方に資するよう、 中長期的な見通しの下、 計画的な推進が求められています。
土地改良事業も、「強い農業」 と 「美し く活力ある農村」 を創出する牽引役と し て、 既存施設の活用やソフ ト施策との効果的な連携に努め、 選択と集中の下、 ス ト ック効果が最大限発揮されるよう戦略的に取組むこ とにより、 地域経済の再生と財政健全化の両立に貢献する必要がありますこれらを踏まえ、 平成27年8月に食料 ・ 農業 ・ 農村政策審議会 (農業農村振興整備部会) に諮問し、 8回にわたる審議、 パブリック ・ コメントや都道府県知事への意見聴取等の法定手続きを経て、 閣議決定となりました2 長期計画の構成長期計画の構成は、 ①農業 ・ 農村をめぐる課題と土地改良の基本方針、 ②目指すべき農村の姿とその実現に向けた基本戦略、 ③政策課題を達成するための目標と具体の施策、 ④東日本大震災からの復旧 ・ 復興、 ⑤計画の円滑かつ効果的な実施。
