
食道癌対胸腔镜下手术(案).pdf
10页1 食道癌に対する胸腔鏡下手術のガイドライン(案) 文献検索と文献採択 食道癌に対する胸腔鏡下手術のガイドライン(案) 文献検索と文献採択 ① 検索方法 2 0 0 6年 4月にデータベースとして”P u b M e d ”と”医中誌”を用いて検索した検索期間は 2 0 0 5 年 1 2 月までとした ② 検索式と検索結果 P u b M e dを用いて、e s o p h a g e a l c a n c e r a n d t h o r a c o s c o p i c s u r g e r yで検索を行った以上の検索で、抽出された文献は 1 9 8編であったこのうち原発性食道癌を主体とする英文論文 9 1 編であり、このうち胸腔鏡下食道切除術に関連した論文は 4 6 編であった 医中誌からの検索では、食道癌 A N D 胸腔鏡下手術で検索を行い、リンパ節郭清を含む原著論文は 1 6 1編であったこのうち、会議録・商業雑誌・総説・解説を除く原著論文は 1 2 編であった ③ 文献選択 P u b M e d により検索された英文4 6 編の文献中にエビデンスレベルの高いランダム化比較試験はなかった。
多くの文献は症例対象研究やケース・シリーズ、総説であった 胸腔鏡下食道切除術は比較的新しい術式であり、 術式に関しても様々な方法が存在し、確定した術式がないのが現状である従って、症例数や手術法の問題からエビデンスレベルの高い文献が少ないのはやむをえない 一方、食道癌に対する手術治療は本邦が世界をリードしている分野であり、胸腔鏡下食道切除術の文献に関して我が国の占める割合は非常に高いそこで、医学中央雑誌データベースからも胸腔鏡下食道切除術に関連した文献を検索し、4 編の和文論文を採用した その結果、和文論文は6編(2編はアンケート調査結果) 、英文論文は 2 3 編の総計 2 9 編の論文を採用した 全文献29編のエビデンスレベルを以下に示す 2 全採択文献 2 9 編のエビデンスレベル 全採択文献 2 9 編のエビデンスレベル ① メ タ アナリ シス ( エビデンスレベル I ) : 0 編 ② ランダム化比較試験 ( エビデンスレベル I I ) : 0 編 ③ 非ランダム化比較試験 ( エビデンスレベル I I I ) : 0 編 ④ 症例対照研究、 コ ホート 研究 ( エビデンスレベル I V ) : 4 編 ⑤ その他 ( エビデンスレベル V ) : 2 5 編 1 . はじめに 1 . はじめに 胸腔鏡下食道切除術は肺合併症の減少および手術侵襲の軽減を目的に 1 9 9 2 年から導入が始まった 1 ) - 1 1 ) 。
本邦では、1 9 9 5年から報告が見られ、以降多施設で施行されるようになってきた 1 2 ) 1 3 ) さらに、2 0 0 2 年 4 月より胸腔鏡下食道切除術が社会保険診療報酬に収載されたこともあり、さらに普及がすすんだ実際、日本内視鏡外科学会のアンケート集計によると鏡視下食道切除術の手術件数は 1 9 9 3 年以降増加しており、2 0 0 3年には約 4 0 0件にも達している 1 4 ) 急速に発達してきている手術分野であるが、 食道切除・リンパ節郭清手技に関しては施設間の差異が大きく、さらに食道切除後の再建術式にも開腹か腹腔鏡下に行うかなどの差異があり、今回ガイドラインを作成するにあたり、最も多く研究・報告されている胸腔鏡下食道切除術のエビデンスに重点を置いた なお、食道癌治療ガイドラインによると、胸腔鏡下食道切除術は現時点では研究段階の治療法と位置づけられており、日本中に広く普及しつつあるものの一般的な治療法とはされていない 1 5 ) そのことを踏まえて、胸腔鏡下食道切除術を施行するにあたり、手術に携わる医師は通常の開胸による食道切除術に習熟していることが必要である。
その上で、日本内視鏡外科学会技術認定を受けているかその相当する技量と経験を有する指導医のもとで行うことが望ましいさらに、術者ばかりではなく手術に携わる助手やカメラ手も、縦隔の解剖や食3 道癌に対する手術手技の知識を十分に持つことが望ましい一方、食道癌に対して胸腔鏡下食道切除術を行う前には、患者および家族に、癌の告知・病態・治療の必要性・現在の進行度に応じた治療方法・適応・予想され得る合併症とその頻度を説明するとともに、現在でも研究段階の治療法であることを説明したうえで他の治療法を自由に選択できることや開胸術に移行する可能性があることなどを十分に説明することが必要であるさらに、患者および家族から同意を得られれば、書面による同意書を取得することが望ましい 2 . 胸腔鏡下食道切除術の定義 『胸腔鏡下食道切除術』2 . 胸腔鏡下食道切除術の定義 『胸腔鏡下食道切除術』とは、胸腔鏡および操作用の鉗子をポート孔より胸腔内に挿入して食道切除およびリンパ節郭清を行う手術である胸腔鏡下食道切除術が開胸下食道切除術と異なる点は、食道癌手術に伴う各種の手術操作を開胸で行う代わりに、胸腔鏡下に行う点である小開胸を用いるかどうかや縦隔の視野展開の方法(鉗子または用手) 、さらに縦隔リンパ節郭清に使用する鏡視下用器具の種類(電気メスあるいは超音波凝固切開装置)など細かい手技では様々な術式がある 1 2 ) , 1 6 ) - 1 9 ) 。
胸腔鏡下食道切除術では、全ての操作をポートから挿入した鉗子のみで行う術式(完全鏡視下法)1 6 ) 、鉗子の可動性を向上させ縦隔展開のための器具を挿入するために小開胸を併用する術式(小開胸併用法)1 7 ) 、さらに縦隔展開に手を胸腔内まで挿入する術式(用手法)がある 1 8 ) 1 9 ) それぞれの術式の違いは、リンパ節郭清のための縦隔展開の方法によるところが大きいどの術式でも食道の剥離授動のみならず、リンパ節郭清は胸腔鏡下に行われるが、これは胸腔鏡の拡大視効果が精密で的確なリンパ節郭清や周囲臓器の損傷の防止に有用であると考えられているからであるなお、小開胸創とは 5 c m迄の皮膚切開創であり、鉗子や器具の挿入のみが可能であり、のぞき込みによる操作は行えない程度の創であるまた、用手法とは上腹部に開けた創より術者または助手の手を胸腔内にまで挿入し行う方法である長所としては触感が得られることで従来の術式に近い感覚で手術が可能なことにあるが、術中血圧が低下することも多く、本邦では施行する施設も限られている 4 3 . 胸腔鏡下食道切除術の適応基準 3 . 胸腔鏡下食道切除術の適応基準 食道癌治療ガイドラインによるとリンパ節転移の少ない表在癌が良い適応とされている。
整容性に優れている点や術後疼痛の少ない点から胸腔鏡手術を導入する施設が増加しているが、縦隔リンパ節郭清は高度の内視鏡下手術手技が要求されることから、各施設の手術チームの熟練度や施設の治療成績を正確に把握し説明した上で、行うべきである 食道癌治療ガイドラインによるとリンパ節転移の少ない表在癌が良い適応であるとされている 1 5 ) 食道癌に対する術前リンパ節転移に対する画像診断率は特異性は高いものの感度が低いため、現在でも縦隔リンパ節郭清を縮小する根拠は示されていないさらに、粘膜下層癌の詳細な検討により粘膜下層癌からも広範囲にリンパ節転移を来すことがわかり、根治手術のためには粘膜下層癌であっても進行癌と同様に気道周囲・両側反回神経周囲を含む頚胸境界部リンパ節の徹底した郭清が不可欠であるとされている他臓器合併切除が必要となる症例を除き粘膜下層癌(T 1 b )から T 3までのいわゆる従来の開胸下の根治術が適応とする報告が多い 9 ) 1 6 ) 1 7 ) 2 0 ) 整容性に優れている点や術後疼痛の少ない点から胸腔鏡を導入する施設が増加しているが、食道癌に対する縦隔リンパ節郭清は解剖学的にも高度の技術が要求され、腫瘍を胸腔内に散布しないように注意をすることはもちろん、周囲臓器の損傷を避ける手術操作が必要であり、各施設の手術チームの熟練度や施設のデータを正確に把握し説明したうえで行うべきである。
推奨 推奨 食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術は開胸手術と同等の安全性と根治性を兼ね備えた低侵襲手術であるとする報告があるが 1 7 ) 2 1 ) 、十分な症例数を有するランダム化比較試験はこれまで報告されていない 今後開胸手術との比較によるエビデンスの高い臨床試験が望まれる エビデンス 4. 治療成績 エビデンス 4. 治療成績 4- 1 根治性 食道癌における胸腔鏡下食道切除術と開胸手術の根治性を比較した無作為比較試験の報告はないしかし、リンパ節郭清の程度に関しては、従来の開胸術5 と比較して差がないとする報告が多くみられる 1 0 ) 2 2 ) 両側反回神経沿いリンパ節を含む頚胸境界部のリンパ節郭清は開胸手術と同様に胸腔鏡手術でも難易度が高く、この部位の郭清のための様々な工夫が施設ごとになされているが、その評価は定まっていない本邦での食道癌治療においては 1 9 8 0 年代より3領域リンパ節郭清術が標準術式として広く施行されるようになり、根治切除術には食道切除のみならず頚胸境界部の徹底郭清が必要とされるこのため、胸腔鏡下食道切除術導入後 1 0 年が経過した現在でも、従来の開胸術式と比較した郭清の質が常に問題となり一般的には標準術式として認知されていない。
なお、欧米では食道癌の手術ではリンパ節郭清は行われておらず、一般にサンプリング程度であるためリンパ節郭清の程度に関する報告はほとんどない 2 1 ) 4- 2 侵襲性 創の縮小による疼痛の少なさや美容上の利点は以前より報告されているが、手術侵襲を客観的に比較した報告は少ないC R P ・I L - 6 などのサイトカインを用いた手術侵襲の評価をみると、開胸群と胸腔鏡群では差がないとする報告や、胸腔鏡群がサイトカイン(I L - 6 ・I L - 8 )や好中球エラスターゼが有意に低値で推移するという報告がある 2 3 ) 2 4 ) さらに、術後の免疫能(O K T 4 ・O K T 8 )の変動を比較した報告でも、両群間に差がみられなかった 2 5 ) 現在のところ、胸腔鏡下食道切除術の手術侵襲については開胸術と明らかな差があることは示されておらず、客観的な手術侵襲の評価も今後検討する必要がある 開胸よる食道癌術後には呼吸機能の低下がみられ、 術後 Q O L の低下をきたす開胸術に比べ明らかに胸壁の変形や呼吸筋の障害が少ない胸腔鏡手術における呼吸機能の温存効果についての検討もなされている。
術後経時的に呼吸機能の測定を行い、肺活量の回復が早いとの報告や、術前と比較して術後3ヶ月の肺活量の低下が胸腔鏡群で有意に軽度であったとの報告がみられる 1 2 ) 2 2 ) さらに、呼吸運動負荷試験で、呼吸運動負荷試験の制限因子としての呼吸困難を術前後で比較したところ、開胸手術の方が有意に呼吸困難を訴える症例の割合が増加しているとの報告がある 2 6 ) 呼吸機能の評価については、腹部操作を開腹で行うか腹腔鏡で行うかということも関連する可能性がありその評価は難しいが、胸腔鏡手術では呼吸機能の温存が可能であるとの報告が多い 4- 3 安全性 胸腔鏡下手術の安全性に関する報告は少ない厚生労働省がん研究助成による『がんにおける体腔鏡手術の適応拡大に関する研究』によるアンケート集計に6 よると、術中偶発症の頻度は294例中41例(1 3 . 9 % )であり、その内訳は神経損傷(8 1 % ) ・気道損傷(1 0 % )や出血(5 % )としている 2 7 ) また、術中偶発症の頻度は 3 . 6 % であり、気管損傷や奇静脈損傷。












