
クラウド環境における電子商取引の標準化と変化.pdf
9页科 学 技 術 動 向 2011年4月号82-1流通経路におる EDI の役割EDI は、商品の流通に幅広く利 用されており、消費者である我々 はその恩恵を受けているが、日常 生活でその存在を意識することは 少ないそこで、まず、消費者がメーカー の提供する商品を購入する場合に おいて EDI の役割を概説する (図 表 1)製品が我々消費者の手に届くま科学技術動向研究クラウド環境における 電子商取引の標準化と変化藤井 章博 客員研究官では、メーカーによって生産さ れた後に何段階かの流通経路を経 る説明を単純にするために、流 通経路がメーカー・卸・小売店の 3 段階のみで成り立っているとす るいま、卸の段階における取引 の状況に注目すると、一つの発注 が小売店から寄せられるとき、そ れは 「注文書」 の形でもたらされ るその発注に対応する品物を発 送する際には、さらに 「納品書」 、 「請求書」 という伝票が伴うそれ ぞれの伝票は、その卸業者の物流 部門においては、発注された製品 のピッキングのための情報システムに、請求書は経理部門における 勘定系のシステムで処理されなけ ればならない同様に、これらの 伝票は、小売店における営業活動 や経理処理、メーカーにおける発 送業務やひいては生産活動にも利 用される。
さらに、一つの卸は、通常多数 のメーカーの製品を取り扱い、多 数の小売店と取引を行うこのよ うに、非常に単純な商取引の事例 においても、消費者、小売店、メー カーの間で複数種類の複数回の伝 票のやりとり、即ち商取引に係わ る情報交換が発生しているEDIとは、 Electronic Data Inter- change の略であり、直訳すると 「電子データ交換」 という意味であ る1)より専門的には、「管理文書、 商業文書又は輸送文書を、標準化 された規約に基づいて、英数字言 語文字列の形で構造的に表現する 手段である」2)と定義されているこれを利用することで、企業間で 取引に関する様々な情報交換を効 率的に実施できる術として、昨今注目されているク ラウドコンピューティング (以下、 クラウドと表記) は、今後の EDI の普及に関して新しい側面をもた らすと考えられる本稿では、まず EDI の標準化 の動向を述べ、クラウド環境にお いてどのように変化していくのか を考えるまた、そのような変化 に際して大学がどのように関わっ ていくのかを考えていく企業間の電子商取引にEDI (Elec- tronic Data Interchange) は、不 可欠とされてきた。
90 年代以降、 インターネットの普及にともなっ て、各業界、企業系列毎に Web を利用した EDI の導入や共通仕 様の策定およびそれらの普及に、 多大な努力が払われてきたEDI の本質は、異なる組織間で の情報共有のためのシステムであ るそこで、情報共有のための技1はじめに―クラウド環境における EDI―2EDI の標準化動向メニューへ戻る9Science & Technology Trends April 2011クラウド環境における電子商取引の標準化と変化???????????????????????????? ???????????? ?????EDI?????????? ????????は、企業間でどのような取り決め が必要であろうかEDI におい ては、伝票の電子的な情報交換の ために、技術的な側面と経営的な 側面に分けると、図表 2 に示すよ うな項目について取り決める必要 があるこれは、技術的な取り決 めと経営上の取り決めに大別され る技術的には、情報の表現形式 に関する部分と通信方式に関する 部分に大別される2)こうした規格は、業界ごとに異 なるそのため、EDI は業界ご図表 1 商取引における EDI の役割概念図科学技術動向研究センターにて作成EDI ????????????? ???????????????????????????????????????????????????????????????????? ??????????????????????? ?????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????図表 2 EDI 規格の概要科学技術動向研究センターにて作成過去には、このような処理は、 帳簿とペンで行われたが、EDI は、こうした情報交換をスムー ズに行うための情報システムであ り、先端的な情報システムの応用 分野の一つであるといえる。
2-2EDI における規格化電子的に伝票を交換するためにとに関連する企業が共通の規格に 参画するという努力が必要にな る銀行業界やスーパー・チェー ン業界は EDI をいち早く導入し 発達させた業界の代表例であり、 ATM による銀行間取引の利便性 の高さは、EDI の導入の成果とい えるまた、コンビニエンススト アにおいては、レジにおいて支払 いした情報がそのまま EDI シス テムに反映されているこのよう に EDI の利用は日常生活の中で 身近に行われている10、 11)メニューへ戻る科 学 技 術 動 向 2011年4月号10製造業のサプライチェーンに属 している企業群では 8 割〜9 割が EDI を導入しているこれに対 し、中小企業間の取引においては 1 割以下の導入率であるとされて いる財) 日本情報処理開発協会が 22 年 3 月に発表した調査結果 「我 が国産業界における EDI/ 電子タ グ実態調査報告書」 では、多様な 業種業態における幅広い規模の企 業のアンケート結果のデータを紹 介している3)まず、 EDI の実施状況としては、 「一部の取引先と行っている」 と回 答した企業が 80.0%、 「全ての取引 先と行っている」 と回答している 企業が 2.2% であった。
売り上げ 規模で 10 億円を境にして、導入 率に大きな差異が現れ、10 億円 未満の企業における導入率 ( 「一 部」 と 「全部」 を合算した数値) が 45.9% であるのに対して、10 億 円以上の売り上げ規模の企業で は 87.5% となっているEDI を導 入していない企業に対して普及の 阻害理由を訊ねた結果、もっとも 大きいのは 「既に取引先と独自手 法 (FAX 等) がある」 が 35.7%、つ いで 「導入コストが高い (28.6%) 」 「EDI 標準フォーマットなど業界 共通の標準がない (25.0%) 」 となっ ている売り上げ規模の境界線を 10 億円に代えて 20 億円、50 億円 とした場合も同様の格差がみられ るすなわち、EDI は大企業におい ては浸透しているが、中小企業に は普及していないこうした傾向ebXML の仕様を承認し、2004 年 に ISO/TS15000 ebXML の各パー トとして出版した 2-4EDI の現状と問題特定の製品分野において EDI を実現するには、これらの国際標 準方式を採用したうえで、さらに 業界ごとに取引の帳票の具体的に フォーマットの内容までを定義し なければならない。
言い換えると メタモデルの上に業界ごとに実装 される EDI である例えば電子 部品では、 「RosettaNet」 とよばれ る標準がある前述したebXML では、「メッセー ジ伝送方式」 、 「企業間取引プロセ スの記述」 、 「取引伝票の構成要素 のモデル」 などの複数の仕様から 構成されており、業界ごとの帳票 の定義に利用されるまた、企業 のサプライチェーンや取引系列に 応じて独自に定められたものもあ る4)EDI を導入することによって、 各業界あるいは参加企業は、サプ ライチェーンの効率化により恩恵 が得られることが期待されるが、 企業間の電子商取引は必ずしも十 分普及しているとはいえない以 下では、そうした状況と、特に技 術面での問題点を整理する2-4-1 EDI の普及の現状日本国内では、大手流通や大手2-3業界全体の EDI 共通 規格検討の経緯EDI で取り扱う帳票は業界毎に 大きく異なるが、通信方式やコン ピュータ上での表現形式は、業界 横断的、国際的に共通の規格を定 めることが望ましいこのように 業界全体を通じて利用される EDI の共通規格は、 「メタモデル」 と呼 ばれる場合もある。
メタモデルに 関しては、国際的な標準化の努力 が行われてきた図表 3 には、過去の EDI に関 する国際的取り決めの経緯の中 で重要な事項を列挙している 図中で 「EDIFACT」「ISO–9735」 「ebXML」 と記載されているのは、 EDI 規格につけられた名称であ るこれらは、前節で述べたメッ セージ交換のためのフォーマット の形式など、EDI を実施するた めに必要な共通の取り決めを定め た文書の体系であるこれまでの 共通規格検討経緯において特に重 要な点は、国際的な取り決めと し て ebXML (Electronic Business using eXtensible Markup Lan- guage) と呼ばれる規格を採用した ことであったebXML とは、XML (eXtensible Markup Languege) と呼ばれる言 語を用いて、インターネット上で 企業間の電子商取引を行うため の一連の規格を指しているUN/ CEFACT (United Nations Cen- tre for Trade Facilitation and Electronic Business、貿易簡易化 と電子ビジネスのための国連セ ンター) と OASIS (構造化情報標 準促進協会) が共同で 1999 年に ebXML Initiative を立ち上げて仕 様開発の活動を開始し、2001 年 に主要な仕様の初版を公開した。
国際標準化機構 (ISO) は OASIS や UN/CEFACT から提出された??????? ?? ?????????? ??? ??????? ?????? ?? ?? ?? ? ???????? ??????? ?? ???????????????? ??? ????? ???????? ???????? ????? ? ????????? ?????? ???????????????????????? ????? ??????????図表 3 EDI に関する過去の主要な国際的取り決め科学技術動向研究センターにて作成メニューへ戻る11Science & Technology Trends April 2011クラウド環境における電子商取引の標準化と変化は、他の様々な調査・研究からも 指摘されている2-4-2 多画面現象過去 20 年間の間を振り返ると、 企業間商取引の IT 化への投資が 叫ばれてきた一方で、その中心的 な役割を担う EDI 等を導入する という投資は、特に中小企業に とってコストの観点から必ずしも 容易なものではなかった それは、 具体的には以下のような 「多画面 現象」 と呼ばれる問題が生じるた めである。
①取引先ごとに独自の EDI が存 在するため、EDI を運用する担 当者は、多数の画面 (Web ブラ ウザのウインドウ) を切り替え なければならない ②既存の、 社内情報システムとは、 必ずしもデータの互換性が保障 されないため、手動によるデー タ再入力の手間が発生する ③EDI ごと、 利用 ID ごとに課金が 発生するEDI システムの構築において 最も重要で労力を要するのは、共 通の。












